毛布

これで何度目の夏だろうか
未だに事実を呑み込めぬまま改札口に向かう男が一人
紫色 周りに 黄色
青色 下りに 水色
誰一人として立ち止まらない
列車は走る男を乗せて

これで本当に良いのだろうか
未だに現実を見つめられぬまま駅に向かう男が一人
外装 素敵に 成熟
内装 稚拙に 未熟
何一つとして目に止まらない
景色は走る男を置いて

「出られない」
列車は無視
「いらっしゃい」

「出られない」
景色は無情
「さようなら」

これで最後の駅なのだろうか
体を毛布にくるめたまま目を覚ます男が一人
黒色 根元に 灰色
赤色 姑息に 茶色
何一つとして思い出せない
記憶はよどむ男も老いて

「出られない」
夜空は無限
「おかえりなさい」