つかれたあきた

母さん、なぜ僕たちは田西なの
なぜ僕ばかりタニシ扱いされなければならないの
逆さまにしただけの西田は授業もろくに聞かず毎日ホカホカの給食を目当てに登校するだけで許される日々を過ごしているのに
なぜ僕は毎日ポカポカ殴られるの
なぜいつも僕の給食には誰かが食べた形跡があるの
それでなくても何だかみんなのと違うなと思ってよく見たら僕だけ一昨日の献立だったよ
おかしな臭いがしていた
なぜなの
ある日僕は「たまにはおまえがポカポカ担当しやがれたもれ」と言って西田を殴った
西田は「痛い!」ではなく「臭い!」と叫んでどこかに行った
それから僕はボカボカ殴られるようになった
僕が教室の半径3メートル以内に入ると「タニシの臭いだ!いまにタニシが来るぞ!」と騒ぐ声が聞こえてくる
クラスの人は全員僕をタニシと呼ぶ
先生だってそうだ
出欠をとる度に「タニシ君」と呼びやがるので僕は遂にこの間抗議した
「僕はタニシなんかじゃありません!僕は田西という名前です!名前を間違えるのは失礼だと思います!」と勇気を出してみんなの前で力強く立ち上がりしっかりと主張したのだ
なのにみんなは頭の機能が悪すぎるらしく「またわけのわからん事言ってるぞこいつ」とか「やべーよ」とか「タニシはタニシだろ」とか「なんでいつも制服裏返しなんだよ」とか「白いカラコン似合ってねーよ」とか「数学の授業中に古今和歌集朗読する方が失礼だろ」とか「いい加減休み時間にさんすうセット広げて積み木に話し掛けるのやめろよ」などという罵詈雑言を吐く事しかできないようなので全く話にならない
肝心の先生も「タニシ君はタニシ君だよ。今日のお薬はもう飲んだのかい?」と僕をどこまでもコケにする
僕はコケでもタニシでもない
大体お薬って何の事だ
僕は誰よりも健康なのに
三日三晩寝なくたって平気だ
僕は色々な事を知りたい
この知識欲を満たす為には一日24時間では全然足りないのだ
毎日の授業中には授業を聞きながら別分野の書物を朗読しつつ右手で授業内容を象形文字でまとめ、左手で書物の内容をアラビア語でまとめる作業をして知識の吸収と脳機能の向上を同時に図っている
休み時間には親友たちとの会話(スワヒリ語)を楽しみ心身をリラックスさせている
こんなにも情熱的に人生を歩んでいる僕を健康と呼ばずに何と呼ぶというのか
脳機能が育ってない人々には理解出来ないのだろう
漢字で呼んでくれる人が一人もいやしないのもそのせいだ
中学生にもなって漢字とカタカナの区別もつかない人達の集まりなのだ
なんということですか
僕は不幸な男の子だぞ
もうすぐ高校受験があるので面接の練習が始まった
先生は「タニシ君の志望動機を聞かせて下さい」とまたタニシ呼ばわりした
すると今までにない感じが僕の頭にズロ~ッとよじ昇って来て「志望動機などありませんが僕は今から自暴自棄です」と僕は答えた
僕は裏返しに着た制服のポケットから剣山を取り出した
制服を裏返しに着ていたのはポケットの中の武器が一つたりとも落ちないようにするためだ
白のカラコンは邪な眼光を跳ね返すために着けている
目が黒いと何でもかんでも吸収してしまい精神統一の妨げになる
僕の行動には全て意味があるのにあいつらはその辺をわかってないから嘲笑出来るのだ
おろかなものよ
星はなんでもしっている
おりひめ星 ひこ星 こばやしあ星
先生はなんにもしらないから星には成れないね
さようなら先生
やっぱり理科室から盗んだ人体模型だけでは実戦力がつかないんです
大丈夫ですよ 勉強した甲斐あって解剖学は全て理解しましたから心臓の位置を間違えたりしませんよ
僕は両手に持った二つの剣山で先生の顔をプシン!と挟んで先生の両耳に刺した
よく考えたらこんなのろわれたおろかものに心臓などという立派な臓器がついてるわけがない
まぁこれで先生がいつパンクに目覚めてもピアッサーの恐怖に怯えなくて済むというわけだ
よかったじゃないか
だけどどうした事だろう
先生は今物凄く怯えた顔をしている
「先生、どうしたのですか。これしきの事でへこたれてちゃパンクロッカーの道は厳しいと思いますが」と何度も声を掛けたが返事がない
パンクロッカーのつもりだな
小賢しい!
その時、何かが僕の頭にバコッと当たった
「パンクしてんのはお前の頭ださっさと病院に戻れこのきち〇いタニシ虫が!!!!!!!」
クラスのバカどものお出ましである
頭を押さえながら足元に目をやると大事な親友たちが箱も中身も枝豆まみれで横たわっていた
「お前の大好きなさんすうセットにお前の大嫌いな枝豆をまぶして究極のハーモニーを醸し出してやったぜ!!!ヒャハハハハザマーミロ!!!!!!!!」
「なぜ僕が枝豆を忌み嫌っていることがどうして君にわかるの」
「はぁ!?先週給食で枝豆出た時『タロいも!』とか言って暴れただろお前!枝豆はタロいもじゃねぇってみんな言ってんのに『貴様タロいもを腹に飼っているな!タロいもはあなたの健康を損なうおそれがありますので今すぐ退治してやる!』とか言い出して俺は「誰よりもお前が一番健康を損なってるよ!」って言ったのに聞く耳を持たないお前は逃げ回るみんなの腹に剣山突き刺して教室六階なのに頭から窓突き破って逃げただろ!!俺らの腹には痛々しい傷痕がしっかり残ってるのにお前はバカだからもう忘れちゃってんのな!流石タニシは頭もタニシなんだなァ~」
奴が何を言っているのか僕にはわからないがタニシという単語を確かに観測したので僕はまた泣きたくなった
先生は笑っていた
剣山が耳栓の役割を果たしていて僕たちの言い争いが聞こえていないのだろう
西田は鼻の粘膜が濡れティッシュに変質し窒息死したらしい
僕は高校に行けないだろうし、この先「田西」と漢字で呼ばれる事もないだろう
当たり前だ
僕は中学生でも田西でもない
そもそも冒頭の母さんって誰だよ
僕は誰だ!
誰なんだ!
誰だよォー!!!!!!!!!!!!!!!!
うわっ!タニシの死骸だ!わあ!こっちにも死骸!
ヒイ!僕も死骸!
あれ!?

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