たかしかかし

たかしは疲れていた
それはもう憑かれていると表現しても過言ではない疲れ方だった
たかしは毎日死を願った
目が覚めた事を悔やみつつ着替え朝の日差しに吐きそうになりながら鉛みたいな自分を操縦して駅まで這い出てホームでくそまずいパッサパサの野菜バーを無理やり胃に押し込んだら丁度電車が来て身体は会社に向かってるけど頭は死に向かってるんだなこれがと思うと泣き叫びたいのか爆笑したいのかわからなくなるんだなこれがギャハハハうわーんえーんえーんギャーハッハッハ

たかしは会社に着くと必ず真っ先にトイレへ駆け込む
たかしは憑かれているので呼吸をするだけで緊張が興奮してお腹がフォーリングダウンになるのだ
本当は朝食をむしゃむしゃがっつりとりたいとも思うのだがそれをやると電車内でフォーリングダウンがにじり寄ってくる
だからくそまずい野菜バーで我慢しているのだ
たかしはみるみるうちにやせ細りやがてくそまずい野菜バーそっくりな姿になった

その頃たかしの身体は会社へ向かう事をしなくなった
その代わりたかしの頭はより積極的に死へと向かいつつあった
四六時中強く死を願った
死を願う以外は何も出来なかった
泣き叫ぶ事も笑い叫ぶ事もある程度気力が必要なのだとわかった
なにもしないしいらない
たかしはゴミと埃と虫の入り乱れる部屋で破れた布団の上に仰向けで死体のように転がっていた
何日その状態だっただろうか
たかしは起き上がり枕元に散らばった乾燥しきった食パンを素早く平らげたあと金切り声をあげて全て吐いた
遂にたかしが立ち上がった

これから死ぬ人間に飯など必要ないと考え家中の食パンを窓からバラ撒いて捨てた
これから死ぬ人間に髪など必要ないと考え自慢の頭髪を高笑いと共に脱ぎ捨てた
これから死ぬ人間に歯など必要ないと考え全部の歯に穴を開け砂糖を詰め込み口に接着剤を塗って二度と口を開けられないようにした
これから死ぬ人間に頭など必要ない考え近所の印刷会社に夜な夜な忍び込み巨大シュレッダーに頭から飛び込んだ
豪華な音色と共にたかしの頭が八つ裂きじゃバラバラに散らばる花びら雫は紅メッタ刺しこれでもう憑かれないたかしの頭たしかに希死希死鳴り響くオルゴォルおおララルフラルラルのフラミンゴ

翌朝八人のたかしが目を覚ました

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